壽 初春大歌舞伎 夜の部


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夜の部
一、義経腰越状(よしつねこしごえじょう)
酔った五斗兵衛の軽快な三番叟
 兄頼朝との関係が悪化するなか、義経は悪臣の言葉にそそのかされ、遊興にうつつを抜かす日々。その様子を案じた忠臣の亀井六郎が雀踊りの奴たちに紛れて諫言するも、聞き入れられません。そこで泉三郎が義経の機嫌を直すため、日本一の音頭取りとして五斗兵衛を迎え入れます。この五斗兵衛、名軍師ながら、刀の目貫師として世を忍んでいるのですが、実は大の酒好き。最初は拒んでいましたが、大好物の酒を目の前に、ついに盃を手にしてしまい…。
 禁酒を破った五斗兵衛が大酔して三番叟を踊ることから「五斗三番叟」と呼ばれ、歌舞伎の醍醐味あふれる演出と趣向が詰まった愉快なひと幕をお楽しみいただきます。

二、澤瀉十種の内 連獅子(れんじし)
勇壮な獅子の豪快な毛振り
 霊地清涼山の麓にある石橋。狂言師の右近と左近が石橋の由来や、文殊菩薩の使いである霊獣獅子の親子の伝説を踊って見せます。その後に、親獅子と仔獅子の精が現れ…。
 能の「石橋」をもとに親子の厳しくも温かい情愛を描いたひと幕。初世市川猿翁の当り芸をまとめた「澤瀉十種」の演出で、歌舞伎舞踊の代表作をお楽しみいただきます。

三、鰯賣戀曳網(いわしうりこいのひきあみ)
鰯売りの叶わぬ恋の意外な結末
 鰯売りの猿源氏は、大名のみを相手にする蛍火という高い位の遊女に一目惚れしてしまいました。蛍火のことで頭がいっぱいで仕事も手につかないその様子を見かねた父親なあみだぶつは、猿源氏を大名に仕立てて廓に送り出します。大名と偽り、やっとの思いで蛍火に出会えた猿源氏でしたが、上機嫌となり酔いつぶれて寝入ってしまい…。
 本年没後50年を迎える三島由紀夫が描き、お伽話のようなおおらかさで、笑いに包まれた人情味あふれる喜劇。身分の違う二人の恋が、思いがけない結末へ繋がっていく珠玉の三島歌舞伎で打ち出しとなります。